家庭やオフィスに眠る貴金属
金やプラチナなどの貴金属は非常に希少な金属で、簡単には採掘できません。そもそもの埋蔵量が限られている上に、地形などの問題で今の技術では採掘できないものも多く、このまま需要が増え続ければ、貴金属はますます手に入りにくくなるのではないかと懸念されています。
しかし、今や貴金属が採れるのは鉱山だけではありません。私たちが暮らす都市でも、たくさんの貴金属をみつけることができます。たとえば、携帯電話1台には金が0.05グラム、銀が0.26グラム、ノートパソコン1台には金が0.3グラム、銀が0.84グラムほど使われていると言われています(※1)。1台あたりの量は少ないですが、日本中にある携帯電話やパソコンの数を想像すると、いかに多くの貴金属が私たちの身近で使われているかがわかります。
一方で、こういった電子機器や家電製品は使われなくなると、自宅やオフィスに放置されてしまいがち。そう、私たちの周囲には、大量の貴金属が再利用されずに眠っているのです。これらの眠れる資源は「都市鉱山」と呼ばれ、近年、リサイクル可能な貴重な資源として大きな注目を集めています。
世界トップレベルの規模を誇る日本の都市鉱山
地下資源に乏しく、「資源小国」とも言われる日本ですが、都市鉱山に関しては世界トップレベルの資源大国です。国立研究開発法人物質・材料研究機構によると、日本の都市鉱山の金は世界の埋蔵量の16%に相当する約6,800トン、銀は22%に相当する約60,000トンにも上っています(※2)。今や日本の都市鉱山は、世界有数の資源大国に匹敵する規模になっているのです。これを使わないままにしておくのは、実にもったいないことですよね。
都市鉱山の魅力は、量が多いことだけではありません。都市鉱山の貴金属をリサイクルすれば、自然の鉱山で採掘するよりも効率よく貴金属を手に入れることができます。環境省によると、自然の金鉱山から採れる金鉱石1トンに含まれる金は約5グラムなのに対し、1トン分の携帯電話からは約280グラムの金が採取できるそうです(※1)。また、自然の鉱山での採掘に比べて環境に及ぼす影響が小さい点も、都市鉱山が注目を集める理由の一つです。
しかし、日本ではまだ都市鉱山を十分に活用できておらず、「大量の資源を眠らせている国」にとどまっています。限りある資源を有効に活かすためにも、使い終わった携帯電話や家電製品は、自治体の回収ルールにしたがって、速やかに処分するよう心掛けたいものです。
※1出典 環境省HP
https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin_backnumber/issues/17-11/17-11d/tokusyu/2.html#main_content
※2出典 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
https://www.nims.go.jp/research/elements/rare-metal/urban-mine/data.html