お気に入りの茶碗や皿が割れてしまったら、皆さんはどうしますか?日本には金などの金属粉と漆を使って割れた陶磁器・漆器などを修復する「金継ぎ(きんつぎ)」という方法があるんです。いったい、どんな方法なのか、にゃんことクマさんと一緒に調べてみましょう。
修繕の跡を「新しい景色」として楽しむ
いつも仲良しのにゃんことクマさん。今日は博士のおうちのお茶会にお呼ばれしました。
おいしいお茶を楽しんでいたにゃんこですが、何か気になるものを見つけたようです。
わあ!このコースター、すごくオシャレじゃない?
確かに!金のラインが素敵だね。博士、どこで買ったの?
買ったんじゃないよ。割れてしまったから、「金継ぎ」で修繕したんじゃよ。
へええ!「金継ぎ」って、何なの?
「金継ぎ」は、割れてしまった陶磁器・漆器などの破片を金などの金属粉と漆(うるし)を使ってつなぎ合わせる、日本ならではの修繕方法じゃよ。金継ぎの歴史は長くて、室町時代(1336~1573年)ごろに始まったと言われているんじゃ。
割れた陶器をきれいによみがえらせるなんてグッドアイデアだね!いったい、誰が始めたんだろう?
当時の茶人たちが、割れた茶器を修繕するなかで普及していったという説が有力じゃ。当時、茶器はすごく高価で、割れたからといってすぐに買い替えるのは難しかった。だから、破片をつなぎ合わせて修繕する技術が発展したと考えられているんじゃよ。
修繕した跡って、普通は目立たないようにするものだけど、金継ぎは逆の発想なんだね。あえて継ぎ目を金色に塗って目立たせるところが面白いなあ。
金継ぎによってできる修繕の跡のことを、「景色」と言うんじゃ。修繕跡を新たな「景色」として愛でることで、そのものに対してにより一層愛着が生まれると言われておるんじゃよ。
なるほど、素敵な考え方だね。僕も金継ぎをやってみたいなぁ。
本格的な金継ぎには特別な材料や道具が必要なので、挑戦するならまずは簡易金継ぎがおススメじゃ。まずは、簡易金継ぎ体験を見学しておいで。
約1時間で完成!簡易金継ぎ体験
にゃんこたちが見学にやってきたのは、東京タワーのすぐ近くにある「芝パークホテル」。
このホテルでは「サステナブルな日本の伝統文化体験」を楽しんでもらうことを目的に、簡易金継ぎが体験できる宿泊プランとアフタヌーンティープランを提供しています。
教えてくれるのは、金継ぎインストラクターの資格を持つホテルスタッフの金田さんと松尾さんです。
今日はよろしくお願いします!
ようこそ、芝パークホテルへ!当ホテルで体験いただける簡易金継ぎの特徴は、本物の漆ではなく植物性樹脂が主成分の「合成漆(ごうせいうるし)」を使うこと。これにより漆アレルギーを起こすおそれがなくなり、所要時間も大幅に短縮できます。
本来の金継ぎの全工程は2~3カ月かかりますが、簡易金継ぎは約60分で完成するんですよ。今日は割れた陶器のコースターを金継ぎします。楽しみながら体験してくださいね!
はーい!
木へらを使って、われた断面に接着剤をできるだけ薄く塗ります。接着剤を塗った部分をつないで、しっかりと押さえます。
断片がくっついたら、はみ出した接着剤をカッターで削り取ります。大まかに削れたら、紙やすりで表面を滑らかに整えます。
つないだ部分を上から合成漆でなぞるように塗っていきます。厚く塗り過ぎないのがポイント。
漆を塗った部分に、上から筆でそっと金粉(※)を落とし、真綿で優しく整えます。
余分な金粉(※)が付いてしまった部分は、スポンジで拭き取ります。
※今回の簡易金継ぎ体験で使用するのは本物の金粉ではなく、真鍮粉(代用金粉)です。真鍮粉は稀に金属アレルギーを起こすおそれがあります。
最後に表面をきれいに拭き取り、接着面が乾いたら完成です!金継ぎしたコースターはホテル特製の木箱に入れて持ち帰ることができます。
モノを大切にすることで生まれる「新しい美」
わあ!金継ぎのコースター、すごくきれいだね。割れていたとは思えないくらい!
本当に。修繕したというより、新しいアート作品に生まれ変わったみたい!
そうですね。金継ぎは、「モノを大切にすることで生まれる新しい美」だと言われています。壊れた陶器を修理して使うことでゴミを減らせると同時に、世界に1つだけのアートとして楽しめる点も、金継ぎの魅力だと思います。
当ホテルでは金継ぎ体験を通じて、日本人が昔から大切にしてきた、モノを大切にする気持ちや環境に優しい暮らしの素晴らしさを、一人でも多くの皆さまに実感していただきたいと願っています。
モノを大切にする暮らし、本当に素敵だね。僕も心がけていきたいな!
金田さん、松尾さん、今日はありがとうございました!
金継ぎで割れた陶器がよみがえるように、壊れてしまったモノの中には、修繕すればまだまだ使えるモノもたくさんあるんじゃ。壊れたらすぐ捨てるのではなく、再利用できる方法がないか考えてみることが大切じゃよ。工夫して楽しみながら、モノを大切にして、環境に優しい暮らしを心がけよう。
取材協力:芝パークホテル
https://www.shibaparkhotel.com/