金を約1万分の1mmの薄さに伸ばした「金箔」は、その美しさと使い勝手の良さから、古来、工芸品や美術品などに広く活用されてきました。今回はにゃんことクマさんが日本一の金箔の生産地・石川県金沢市を訪れて「金箔貼り」を体験。なぜ金沢で金箔づくりが盛んになったのか、金沢箔の歴史や特徴についてリポートします。
金沢は金箔の生産量が日本一!
新幹線に乗って石川県金沢市にやってきたにゃんことクマさん、そして博士の3人組。
降り立った金沢駅のホームで、早速何か気になるものを見つけたようです。
見て!ホームに並んでいるこの柱、上の方がきらきら輝いているよ!きれいだなあ。
よく気が付いたね。あれは、金箔(きんぱく)じゃよ。金沢は昔から金箔の生産が盛んで、現在、日本の金箔のほぼ100%が金沢で作られているんじゃ(※1)。今、到着した金沢駅ではいろいろなところに金箔が飾られていて、この柱は駅の構内に全部で60本もあり、約2万枚の金箔が使われているそうじゃよ(※2)。
2万枚も!すごいね~。でも、柱が高くてよく見えないな。もっと近くで金箔が見たいなあ~。
それなら、明治時代の1898年創業で金沢一の金箔生産量を誇る老舗・今井金箔さんがおすすめじゃ。今井金箔さんでは、金箔の魅力をいろいろな人に知ってもらうために、金箔貼りの体験メニューを提供しているんじゃよ。
金箔貼り体験?なんだか楽しそう!
本物の金箔を自分の手で貼る体験ができるんじゃ。出来上がった作品は持ち帰れるから、金沢旅行の土産ものとしても人気なんじゃよ。
やってみた~い!
よし、じゃあ予約して明日行ってみよう。
※1金沢市ホームページ
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/kohokochoka/gyomuannai/5/5/6/2052.html
※2石川県ホームページ「金沢箔」
金沢箔 | 金沢駅 伝統的工芸品探訪 (https://www.pref.ishikawa.jp/shink/kanazawaeki/detail/pf_01.html)
金沢では、なぜ金箔づくりがさかんなの?
翌日、にゃんこたちがやってきたのは、名所・兼六園の近くにある「今井金箔 本店」。
お店では金箔に詳しい今井さんと百万(ひゃくまん)さんが3人を出迎えてくれました。
こんにちは!今日はよろしくお願いします。
ようこそ、今井金箔へ!金箔に興味を持ってくれて嬉しいです。何でも聞いてくださいね。
金沢ではいつぐらいから金箔が作られていたんですか?
少なくとも16世紀の終わりごろには金箔や銀箔が作られていたことがわかっています。 金箔作りで重要な工程の紙仕込みに必要である良質な水が手に入ったことや北陸では 金箔を使う工芸品や仏壇づくりが盛んだったので、金箔の技術が発展したと言われています。
へえ!そんなに昔から作られていたんですね。そもそも、金箔ってどうやって作るんですか?
金箔づくりは、金に少量の銀や銅を混ぜて合金を作り、それを約1,000分の1mmの薄さまで打ち延ばす「上澄(うわずみ)工程」と、上澄をさらに約10,000分の1mmまで薄く延ばす「箔(はく)工程」に分かれています。金沢の金箔には昔ながらの手法で作る「縁付(えんつけ)金箔」と1960年代頃から始まった近代的な手法で作る「断切(たちきり)金箔」の2種類があります。縁付金箔はとても高度な技術が必要な手法で、製造技術が2020年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されたんですよ。
すご~い!
ただ、縁付はとても手間暇がかかる手法なので、作れる量が少ないです。現在の主流は断切金箔になってきています。
へえ~。縁付金箔は特別なんですね。
縁付も断切もそれぞれ美しいですが、縁付金箔は和紙の表情を持つ、柔らかくてしっとりした輝きが魅力で、伝統工芸品や文化財の保存修復によく使われます。今井金箔では昔ながらの金箔の美しさを皆さんに知っていただくために、縁付金箔を使った金箔貼り体験のメニューをいくつかご用意しています。にゃんこさんとクマさんも、ぜひ挑戦してみてください!
金箔の中でも特に貴重な縁付金箔を使った体験ができるなんて嬉しい!
よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
金箔貼りに挑戦!オリジナルタンブラーを作ろう
今井金箔 本店では店舗奥の専用コーナーで金箔貼り体験をすることができます(要予約)。にゃんこたちは、蓋ができて繰り返し使える環境に優しいコップ「タンブラー」に金箔を貼る体験を選びました。教えてくれるのは今井金箔の百万さんです。
百万さん、よろしくお願いします!
よろしくお願いします!今回、皆さんに挑戦していただくのは、タンブラーへの金箔貼り体験です。所要時間は約20分。黒い台紙にあらかじめ糊が塗ってあるので、そこに金箔を貼ることで金沢の伝統的な「加賀小紋」の模様が出てきます。
なんだか難しそう。僕にもできるかな?
ゆっくりやれば大丈夫ですよ。早速やってみましょう。
台紙に張られたシートを剥がすと、糊を塗った加賀小紋の模様が出てきます。
※光が反射して糊が黄色に見えていますが、実際にはほぼ透明です。
※光が反射して糊が黄色に見えていますが、実際にはほぼ透明です。
シートを剥がしたら光陽箔(銀箔に色を付けたもの)を好きな場所に貼っていきます。箔はとても薄くて軽いのでくしゃみや鼻息で飛ばさないように注意しましょう。
光陽箔を貼ったら、糊付けしたところ全体に金箔をかぶせて貼り付けます。
金箔シートをゆっくりと剥がし、加賀小紋の模様が浮き上がるように表面の金箔を刷毛で払って取り除きます。
きれいに模様が浮かび上がりましたね。金箔の美しさがとてもよく表れています。今井金箔 本店ではプラチナ箔を使った体験もできるので、金箔とプラチナ箔の両方を貼り付けてそれぞれの輝きを楽しむのもおすすめです!
金箔を貼った台紙を入れたら、世界で1つだけのオリジナル金箔タンブラーの完成です。余った金箔で台紙の余白に名前や日付を入れることもできます。にゃんこさんたちも、上手に名前を入れられましたね!
にゃんこさん、くまさん、金箔貼り体験はいかがでしたか?
楽しかったです!自分で貼ったと思えないくらいきれいにできて嬉しい!
金箔がすごく薄くてびっくりしました。
ここまで薄く延ばせるなんて職人さんはすごいなあ~。
ここまで薄く延ばせるなんて職人さんはすごいなあ~。
薄くて軽い金箔は持ち運びや加工がしやすく、いろいろなものに使われているんじゃ。今井金箔さんでは、金箔を貼ったソフトも食べられるんじゃよ。
え!金箔をソフトに貼るの?
そうなんです。金箔をシートのままペタっと貼ってお召し上がりいただくソフトです。私の祖母が「金箔をもっと身近に感じて欲しい、金箔の魅力をもっとたくさんの方に知って欲しい」と願って考え出したものなんですよ。
うわ~!とっても豪華で美味しそう~!
きらきらしてすごくキレイだね。ぼくたち、すっかり金箔が大好きになっちゃった!
ありがとうございます。金箔貼り体験はまさに、金箔を身近に感じて好きになっていただくために始めた取り組みなんですよ。貴重な金箔づくりの技術を途絶えさせないためには、金箔の需要を減らさないことが大切です。これからも今井金箔では、様々な角度から金箔の魅力を発信して、金箔のファンを増やしていきたいと思っています。
僕たちもすっかり金箔のファンになったから、お友達にも知らせるね!
今井さん、百万さん、今日はありがとうございました!
今井さん、百万さん、今日はありがとうございました!
広がる金箔の可能性
金沢の旅を堪能して、おうちに戻ってきたにゃんこたち。
金箔タンブラーでお茶を飲みながら旅の思い出話に花を咲かせています。
このタンブラー、本当にきれいだね。いつものお茶も、このタンブラーに入れるとすごく美味しく感じるなあ~。
そうだね、なんといっても本物の金を使っているからね!
金沢で買ってきた金箔入りのクッキーも食べよう。
美味しい!今井金箔さんのソフトもとっても美味しかったね。でも、金が食べられるなんて、本当にびっくりしたなあ。
金箔(食用金箔)は見た目が華やかだから、おめでたい席の食べ物やお酒に使われることも多いんじゃよ。また、今井金箔さんによると、最近は食べ物だけでなく、金箔を使った化粧品やヘア・アレンジメントも人気があるそうで、金箔の使い道はますます増えているのだそうじゃ。こうして金箔の使い道が増えることが、金箔づくりの技術の伝承につながるんじゃよ。
僕たちもこのタンブラーをいろいろな人に見せて、金箔の魅力を伝えていこうっと。
うん。そして、また皆で金沢に金箔貼りをしにいこうね!
取材協力:今井金箔
https://www.kinpaku.co.jp