知ってる?「金」の回収サイクル

 金は地球上にわずかしか存在しない貴金属です。有史以来採掘された金の総量は、約19万40トン。国際基準プールに換算すると、約4杯分の計算です。です。そんな金の多くは、金鉱山で採った鉱石から取り出されてきました。
 金鉱石には、金以外にプラチナや銀などの貴金属も含まれています。金鉱石は細かく砕いてすり潰します。そして薬液を用い、金を含んだ有用成分を溶液にして抽出します。その溶液(貴液)を電解槽に入れることで、イオン化しにくい金・プラチナ・銀などを析出させることができます。そして取り出したものを高温の炉で溶かします。すると比重の重い金を下方に集約し、分離することができるのです。この時点で金の純度は98%になります。
 さらに精製を重ね、純度を99.99%まで引き上げて、「インゴット」を製造します。

 日本の場合、かつては金含有率の高かった金鉱山がありましたが、コストに見合う量の金を採掘し尽くしたため、今ではそのほとんどが閉山しています。

 日本では金鉱山に代わり、今注目されているのが、都会の“鉱山”です。実は都会には、金鉱山の金の量をはるかに上回る “金鉱脈”があります。それはパソコン、携帯電話、デジカメ、ゲーム機などです。金は最もさびにくく変質しにくい貴金属です。また細く薄く延ばすことができるうえ、電気を通しやすいため、精密工業製品には不可欠なのです。1つ1つに含まれる量はわずかですが、全部集めれば大きな鉱山に匹敵する量になり、「都市鉱山」とよばれます。

 田中貴金属工業では、日本中の都市鉱山から貴金属を回収し、純度の高い金を精製しています。そのリサイクルの工程をご紹介します。

貴金属回収 開く

 田中貴金属工業では、電子機器などの工業用スクラップ、工場の廃液、貴金属ジュエリーなどから貴金属を回収しています。
 ICなどの半導体やアルミはくなどには、ごく薄い金のめっきが施されているものが少なくありません。パソコンのハードディスクの一部などにも金、プラチナ、銀などの貴金属が使われています。貴金属を入れたプラスチック容器にも使い終わった後は微量に貴金属が付着しています。
 金めっき用の廃液にも金は溶けています。たとえば半導体製品などのめっきに使用した液体。あるいは電子機器の部品を製造する際に使用した貴金属抽出用の液体など。これらを処理することでも、高純度の金を取り出すことができるのです。
  • ジュエリー
  • スクラップ
  • 溶液

王水溶解&還元 開く

 あつめられた貴金属ジュエリーや、工業用スクラップなどは、王水とよばれる混酸の溶液に投入されます。王水とは、一般的には硝酸と塩酸を1:3の体積比で混合した液体できわめて強い酸化力があり、金を含むほとんどの貴金属を溶かすことができます。しかし反対にプラスチックや樹脂は溶けません。
 金を溶かした王水は還元用のタンクに搬送されます。
 金は最もさびにくい貴金属です。さびにくいということは、酸素と結びつきにくいということ、つまり酸化しにくいということです。その金が王水の中では、電子を奪われた状態のイオンで溶存しています。この中に、酸化しやすい物質(還元剤)を投入します。すると金は、真っ先に電子を供給され、再びイオンの状態から固体の貴金属となります。これを還元といいます。金は粉末状になり、溶液は濁り水のようになります。

金粉ろ過 開く

 次に、溶液に析出した金粉をろ過します。取り出された金粉は、
この時点では水分も含まれているので、純度が99%~99.9%になっています。しかも金粉の色は金色ではなく茶色です。
 この金粉には、還元剤が残っていますので洗浄を行います。
 この金粉は洗浄後、乾燥させます。金粉はさらさらになり、
この段階では純度が99%~99.9%となります。
 再度、純度を高める為に王水溶解&還元を行うことで、
99.99%まで純度を上げることが出来ます。

ささぶき加工~鋳造 開く

 次に、金粉を熔解する為に装置に投入し、約1200℃まで温度を上げます(金の融点は1064.18℃)。
 溶融した金は、装置の中で冷却され、米粒の半分くらいの均一な粒子になります。この粒子の状態を「ささぶき(笹吹き)」といいます。
ささぶき加工
 ささぶき加工された金は、まばゆいくらいの黄金色の輝きを放ちます。金には、広い範囲の光を吸収する性質があります。つまり、緑から紫色までの光を吸収し、残りの赤から黄までの光を反射します。この反射光が黄金色に見えるのです。これほどの吸収幅をもつ貴金属は金だけです。
 金のささぶきを、さらに融解して金を結晶化していくことで、純度を高めることができます。99.999%、いわゆる「ファイブナイン」とよばれる純度のインゴット(鋳造塊)をつくることが可能です。
鋳造
 インゴットは、金のささぶきを融かして鋳型で固めてつくります。金地金の純度は通常99.99%です。
鋳造

検査&刻印
 完成したインゴットはひとつひとつ高い精度で検査・計量され、完成します。田中貴金属の金地金には、世界でもっとも権威があるとされるロンドン金市場の公認マーク「メルターズマーク」が刻印されます。
検査&刻印