貴金属のやわらかい話

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#基礎知識

希少な貴金属が、
いろいろな製品に
使われているのは
なぜ?

産出量が非常に少ない貴金属は、希少であるがゆえに高価でもあります。しかし、それにもかかわらず貴金属は幅広い産業分野で、いろいろな製品に使われています。なぜ、希少で高価な貴金属が、あえて使われるのでしょうか?

貴金属は全部で8種類

貴金属とは、金属の中でも特に産出量が少なく、希少な金属のことです。自然界にある元素約90種類のうち、約70種類が金属元素、そのうち貴金属は次の8種類のみです。

貴金属には「さびにくい」「優れた加工性をもつ」「電気をよく通す」「熱に強い」などの特性があり、化学的に安定している(他の物質の影響を受けにくい)ことから、製品の動作が安定する、耐久性が高くなるなど、貴金属を用いることには大きなメリットがあります。希少で高価な貴金属が幅広い産業用製品、特に安全性が求められる製品の素材や部品として幅広く使われているのは、そのためです。

貴金属8種類とその特徴
名称(記号) 特徴・用途の例


(Au)

柔らかく、加工しやすい。宝飾品はもちろん、
たとえば携帯電話やスマホの中で極細線となって
電気をつなぐ大切な役目を果たしている。

プラチナ
(Pt)

熱に強く、1770℃にならないと溶けない。
その性質を活かして、宝飾品や自動車部品、
抗がん剤の原料など幅広く活用されている。


(Ag)

最もよく電気を通す貴金属。光をほぼ100%反射
するので鏡に使われている。除菌・抗菌作用にも優れ、
消臭剤などにも活用されている。

パラジウム
(Pd)

水素の吸収力に優れることから、「燃料電池」の
水素製造などに活用されている、加工しやすいため、
電子部品の原材料としても活用されている。

ロジウム
(Rh)

非常に硬い。どんなものにも溶けない性質を活かし、
電子部品の表面を硬くするため(めっき加工)に
使われる。

イリジウム
(Ir)

高温に耐える性質を活かし、自動車用点火プラグに
活用されている。エンジン内の高温かつ過酷な
環境下で腐食や熱に耐え、プラグの寿命延長に貢献。

ルテニウム
(Ru)

ハードディスクの記憶容量を飛躍的に大きくした。
無公害水素エネルギー(未来エネルギー)を生み出す
ため、水から水素を発生させる光触媒として活躍。

*触媒:少量存在するだけで化学反応を著しく促進したり、
特定の反応だけを起こしたりする物質

オスミウム
(Os)

酸化しやすい性質を活かして、指紋検出などの
科学捜査やバイオテクノロジーに活用されている。
非常に硬く腐食しにくいので万年筆のペン先にも
使われる。

活躍する貴金属

貴金属は、その優れた特性を活かして、ますます幅広い分野で使われるようになっています。特に環境に優しい次世代エネルギーや宇宙開発、医療など、最先端の技術と高い安全性が求められる分野での活用が進んでいます。今や、貴金属は快適で安心な未来の暮らしを実現するために不可欠な存在と言っても過言ではないのです。

ここでは、その活用例をいくつか見ていきましょう。

次世代エネルギー

地球環境に優しい次世代エネルギー供給方式として注目されている燃料電池。「水素」と「酸素」を反応させて「電気エネルギー」を生み出し、二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質を排出せずに、「水」だけを排出するクリーンな発電の仕組みには、実はプラチナが欠かせません。

そのほか電気自動車に搭載されるリチウムイオンバッテリーの電極と部品を繋ぐ「ボンディングワイヤ」には、金や銀、パラジウムが使われています。また、太陽光発電のソーラーパネルでは、 効率良く発電するための装置にルテニウムが活用されています。

医療・健康

動脈硬化や心筋梗塞の治療で行われるカテーテル手術には、金やプラチナ、イリジウム製の医療器具(ステントやコイル)が使われています。また、妊娠検査やウイルス検査などの「体外診断キット」では、コロイド状(ナノサイズの粒子)になると赤色に変わる金の性質を利用して、検出ラインの発色剤に金のコロイドが使われています。

航空・宇宙

ロケットのエンジンの部品は、宇宙での厳しい環境に耐えられるように、金や銀、パラジウムを使った「貴金属ろう材」という接着剤で固定されています。また、放送や通信に欠かせない人工衛星には、本体を外部の熱から守る断熱材「サーマルブランケット」に、銀が使われています。

限られた貴金属を
有効活用する取り組みも

このように、実に幅広い分野で活用されている貴金属。美しいだけでなく、優れた特性を併せ持つ貴金属は、私たちの生活に欠かせない、大切な資源でもあるのです。貴金属というと、延べ棒や金貨、指輪やネックレスなどジュエリーのイメージが強いので、少し意外だったかもしれませんね。今後、貴金属の活用の場は、技術革新とともにますます増えていきそうです。

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