仕事を知る/開発

今この瞬間が、未来をつくる。

PROJECT STORY

環境負荷の小さい次世代エネルギー“燃料電池”。我々人類が直面する環境問題、特に二酸化炭素排出量の問題を解決しなければ人々の暮らしは立ち行かなくなってしまう。環境問題は、関係者のみならず、地球に生きるすべての人の課題であることはいうまでもありません。学生時代から燃料電池の研究に没頭し、そのまま研究の道に進む選択肢を捨て、その知見を世の中のために活かしたい、とビジネスの世界へ足を踏み入れた工学博士・岡谷一輝。限られた資源である貴金属を相手に彼が想い描く未来を語ってもらいました。

配属早々、技術者としての力量を問われる日々。

入社して最初の半年間は研修があって、その後それぞれの配属先が決まるのですが、私はいきなり某社と“燃料電池で走る自動車”の共同開発チームに加わることになりました。誰もが知る有名メーカーの技術者たちとの仕事。私は必要以上にプレッシャーを感じていました。燃料電池触媒については博士課程まで研究を続けてきたとはいえ“入社間もない自分の技術レベルで参加してもいいのか”と。やはりというか、思った以上に厳しい毎日でした。そこにあるのは一切の妥協を排除する姿勢とハードな要求のみ。新米だろうが一人の技術者には変わりない。燃料電池触媒が抱える最大の課題は、活性と耐久性がトレードオフになってしまうこと。その両立が極めて難しい。この問題を打開するためにも、このプロジェクトはまたとないチャンスでもありました。試行錯誤をひたすら繰り返し、手強い技術者のみなさんに褒められたときは本当に嬉しかったですね。学問として追求していたときとまったく別の感情でした。技術者として認められた気がしたのです。

アカデミックか、社会性か。

話しは少し入社前に遡りますが、私は高専から修士、博士課程まで進みました。進路については、そのまま学問としての道を貫くか、学んだことを社会に送り出す道を行くかという選択肢がありましたが迷いはありませんでしたね。モノ造りの重要な視点としてQCD(Quality, Cost, Delivery)という要素があります。品質と価格、納期の3要素すべてを重視するということ。学問では当然Qに軸足がありますが、ビジネスにおいてはCとDを欠くことはできません。学問として学んできたことは、必ず世のため、人のためになる。そのためには、研究を研究で終わらせるのはなく普及させる必要がある。その信念が私をビジネスの世界に向かわせました。これを読んでくださっているみなさんも、CM等で目に触れることがあると思いますが、水素で動く自動車やエネファームなど、環境に優しい新たなエネルギー源として人の暮らしを支えていくものです。特に“未来の車”とされていた燃料電池自動車が現実に世の中に出ている。その一部に関われたことは私の大きな財産ですし、公道に溢れるようになったらこんなに嬉しいことはありません。その光景は、私が実現したい世の中のひとつの姿でもあります。

子どもの頃に刺激を受けた
世界をつくりたい。

実はその水素で走る自動車、2015年の箱根駅伝で先頭を走っていました。レース以上に私はそこに注目してしまいました(笑)。見た目は誰の目にもわかる車ではありますが、目に触れない部分に私たちの“想い”が詰まっている。夢を乗せて走っている。ドラえもんがやって来た22世紀の世界では、すでに車が空を飛んでいました。それもあと100年くらい先のこと。そんな世界が実現できたら、と本気で思っています。小さい頃はそれこそマンガの中の出来事でしたけど、学生時代からずっと研究を続けてきたことが仕事になり、進化の過程を追う毎日を過ごしているとそれも実現できるのではないかと思うのです。私が生きている間にそれが実現できるかはわかりませんけど、そのきっかけになる発見なのか製品なのか、何かしらこの世界に残したい。燃料電池触媒の研究をしている人ならわかると思いますが、田中貴金属工業の製品は多くの論文に出てきますよね。壮大な夢を実現するために最前線であるこの会社にやってきました。進路で迷ったことはありません。一途。この想いが夢の実現の原動力です。

PROFILE

田中貴金属工業株式会社
化学回収カンパニー
技術員博士(工学)

岡谷 一輝