CSR(企業の社会的責任):信頼を築き続ける

第三者所感

【略歴】
横浜国立大学経済学部卒業、日本能率協会を経て淑徳大学国際コミュニケーション学部・経営学部教授。2014年CCI研究所設立。専門は環境/CSRコミュニケーション。主要著書に『インターナル・コミュニケーション経営』『渋沢栄一に学ぶ「論語と算盤」の経営』『環境コミュニケーション』『CSRマネジメント ステークホルダーとの共生と企業の社会的責任』『CC戦略の理論と実践-環境・CSR・共生』『CSRイニシアチブ CSR経営理念・行動憲章・行動基準の推奨モデル』など多数。

清水 正道

筑波学院大学客員教授、CCI研究所代表、日本広報学会理事「経営コミュニケーション研究会」部会長、経団連推薦社内報審査員

 まず冒頭で、TANAKAの「何かが変わる」「これから楽しみです」とお伝えしたいと思います。毎年スタッフの方々と意見を交わし、主要工場の見学も行ってきました。毎年新しい発見があります。今回はとくに、これまで「内に秘めていた素敵な企業文化」を瞥見できたことと、グローバルな「貴金属の有効利用」とローカルな「生物多様性の保全」とを同時に見せる工夫の2点をあげてみたいと思います。

未来につながる“地金はお金”の企業文化

 そのことに気がついたのは、田中電子工業(株)佐賀本社工場の会議室でした。TANAKAでは“地金はお金”という言葉が現場で飛び交っていたというのです。「うちの工場にゴミはない」「すべて回収して生まれ変わる」・・・そこで耳にした言葉は、クリーンルームの作業の場だけでなく、未来社会にも通じるイメージではないか、と思ったものです。
 TANAKAの工場を訪ねてみると、感覚としてわかることが文字や映像に移し換えただけではわかりにくい、と何度も思っていました。ですから、直接形容されなくても、昨年度に富岡工場が「省エネ大賞受賞」、中央労働災害防止協会から「会長賞」というように事実が記載されたり、またCSR評価に関わる「RBA行動規範」や「EcoVadis」のような内外専門機関から認定を受けたりしたとの記述があれば、内部だからわかる“実感”が社外にも具体的な見解や意見として伝わることになります。

「見える化」から「態度・行動」の共有へ

 どのような仕事であっても、多様な企業活動の実態は、社会において「見える化」されないと隣のラインの社員にさえ伝わりません。とりわけTANAKAのような事業では、専門性が高いゆえに適切な指標づくりが求められます。該当箇所は「CSRパフォーマンス」です。さらにデザインを工夫すると、さらに説得力が高まるでしょう。本業以外のスポーツや地域・社会への貢献などの活動でも、態度・行動の程度で印象は大きく変わりますので同様です。
 参考までに申し上げますが、ここ数年、研究者たちと共同研究をすすめてきたのは、夢や希望などの気持ちを伴った概念をどう伝え、共有していくか、どう自分ごととして行動してもらうか、でした。50社に及ぶ企業のトップ・役員等へのインタビューを通して分かったことは、誰であれ、言葉だけでなく態度や行動で示すことが重要であり、それを飽きずに続けていくことで想いも伝わり、共有できるのです。
 それを視覚的に表現し、読者の関心を高めたのが12-13頁の特集です。資源を循環させるのも放置して環境汚染を引き起こすのも、人々の考えや行動です。そのことを上手に表現したと思います。

夢や目標を達成する一つの方法は「小さなことを積み重ねること」

 このような粘り強い働きかけが、TANAKAの「さまざまな可能性を拓く」のだと思います。すでにそれは、フレキシブルタッチパネルや燃料電池、手術・治療用部材などの形になりつつありますし、また日刊「CSR通信」の通巻1700号達成にも現れています。
 これは毎日1枚ずつ作成される一種の壁新聞。社内に掲示される“眺めただけでも分かる”CSRの知識や事業所からの活動報告であり、企業のCSR関係者の垂涎の的になっています。たとえささやかな一歩でも、それが継続されれば誰も真似すらできない成果となるのです。
 今日、デジタル革命とともに「マテリアル革命」も進行中です。貴金属の新たな活用を求められニーズはさらに加速されるでしょう。本誌冒頭で田苗社長が「安全を第一としたうえでの生産性向上」を訴えていますが、「2020年のありたい姿」に到達するには、逆説のようですが「小さなことを積み重ねること」こそが、王道ではないでしょうか?
 ぜひこの「報告書」から、未来への「王道」を探し当てていただければ幸いです。