CSR(企業の社会的責任):信頼を築き続ける

第三者所感

清水 正道

CCI研究所代表、日本広報学会・理事「経営コミュニケーション研究会」所属、経団連推薦社内報審査員

【略歴】
日本能率協会、淑徳大学経営学部教授を経て2014年CCI研究所を設立。専門は環境/CSRコミュニケーション。主要著書に『インターナル・コミュニケーション経営』『広報・PR概説』『渋沢栄一に学ぶ「論語と算盤」の経営』『環境コミュニケーション』『CSRマネジメント』『CC戦略の理論と実践』など多数。

“200年企業”というチャレンジに期待します

 2013年から今年まで8冊のCSR報告書を拝見しました。この間、基本的な内容は変わっていませんが、毎年取り組み範囲を拡大してきたことを反映して、2020年はさらに充実してきたと評価できます。
 とくに今年は、冒頭のトップメッセージに注目しました。
 創業135年を迎え、田中新社長が登場し2085年(創業200年)に向けた超長期構想を策定するという強い意志が示されました。おそらく直近の経営課題に対応するだけでなく、人口変動や気候変動による事業リスク、新技術や新事業の可能性などが提示される一方、デジタル技術の普及を背景にどのような新世界が想定されるのかも語られるのではないでしょうか。新世界はやはり「持続可能な社会」であることが求められますが、その新世界の形成にどう貢献するのかが“200年企業”には問われます。
 今年1月頃から顕著になった新型コロナウイルスの感染拡大は、これからの社会を占う契機のひとつなのかもしれません。感染症は世界の国々の社会・経済活動に大きなインパクトを与え続け、企業にも積極的な対応を迫っています。この難局に対して、医療・衛生の改善はもとより、各種デジタル製品の開発・普及による生産性向上に寄与する企業・団体には大きな期待が寄せられています。貴社も金加工技術を活用して感染症簡易検査キットの開発に取り組むなど、人々の生活・仕事に役立つ研究開発や生産・販売活動を進めてきました。効果的な事業活動を生み出すのは、従業員一人ひとりのアイデアや努力ですから人材育成にも注力してきました。このような活動がさらに強力に進められていくならば、2085年には確固とした事業基盤を持つグローバル企業となることが可能です。

環境/CSRリーディング企業になっていくために

 CSR報告書は、制作し従業員に配付したら終わりではありません。本報告書そのものがLIMEX活用によって再生されます。貴社には「地金はお金」と口ずさむ習慣があると現場で何回も伺いました。それは素敵な企業文化です。「地金はお金」と考えるのは、リサイクルの発想であり、私たち人間のコミュニケーションの発想です。「おはよう」という挨拶に「おはよう」と返されると心が和んだり安心したりするように、報告をしっかり受け止め、よく理解し、他の人に伝えて、自分事として積極的に行動して初めて「目に見えるカタチ」になります。それこそ地金がお金になるように。
 貴社は貴金属のリーディングカンパニーです。ですから独自の事業特性を踏まえて、外部調達地金1トン当たりの利益(資源生産性)やすべての地金投入量に占める自社リサイクル地金量(循環利用率)を算出し、資源をどれだけ効果的に活用して利益を生み出しているのかを数字で表してきました。

インサイド・アウトの発想で仲間を増やそう

 貴社の資源生産性や循環利用率は継続的に向上しています。またその他の環境やCSR活動、職場環境や企業経営にも特段の問題はありません。しかし「問題がないということ」を説明するのは難事です。得られた効果を説明するには、取組成果に関するデータがきちんと表示されなくてはなりません。
 各年度の報告書を拝見しますと、地球環境や人事に関する表現やデータの位置が異なっていたり、さまざまな取り組みが分野別に並列で報告されているため、年度毎の成果が比較しにくいなどの制作上の課題があります。ぜひ改善していただきたいと希望します。
 また役員・従業員やご協力者の皆様には、この報告書を参考にして、貴社のCSR活動について、ご家族・知り合い・取引先とぜひ話題にしていただきたいとお願いします。本報告書は毎年1回の発行ですが、従業員アンケートも掲載するという意味では一種の「社内報」です。最近各社の社内報はインターナル・コミュニケーション(IC)のツールとしても使われるようになりました。IC手法は、採用や企業理念の共有、投資家への事業説明などでも活用されています。社内(インサイド)向けの報告であっても、その内容を役員・従業員の皆様が社外(アウト)の方々にしっかりと伝えていくならば、もっと効果的な報告(書)になっていくのです。
 ぜひ大いに活用していただきたいと念願します。